在留資格の申請をするときに「パスポートがないと申請できないのでは?」と不安になる方も多いです。
特に、在留資格の『期間更新許可申請』や『変更許可申請』を考えているけれど、パスポートの更新が間に合わない、有効期限がすでに切れてしまっている…というケースもあることでしょう。

在留資格の申請時にはパスポートが必要?
出入国在留管理庁の基本ルール
在留資格の申請(期間更新許可申請・変更許可申請)を行う際、出入国在留管理庁では、基本的な提出書類として「パスポート」と「在留カード」の提示を求めています。

また、新たに在留資格を申請する「在留資格認定証明書交付申請」の際には、以下のような説明がされています。
在留資格認定証明書上の氏名と旅券(パスポート)上の氏名の表記が異なる場合には、入国までの各手続において確認を行う等により、手続に時間を要する場合がありますので、提出が可能な場合には、申請時に旅券(パスポートの写し)を併せて御提出ください。
出入国在留管理庁HP(技術・人文知識・国際業務)
つまり、在留資格認定証明書の氏名とパスポートの表記が少しでも異なると、査証発給や入国時の確認作業に時間がかかる可能性があります。そのため、余計なトラブルを防ぐためにも、可能であれば申請時にパスポートの写しを提出しておくと安心です。
パスポートがないと在留資格の申請ができない?
では、有効なパスポートがなければ、在留資格の申請ができないのでしょうか。
その答えは、『有効なパスポートが無くても、在留資格の申請は可能』です。

【在留資格認定証明書交付申請】
申請時点でパスポートの写しの提出は必須ではありません。
ただし、認定証明書(COE)が交付され、本国の日本大使館・領事館にて査証発給申請を行う際や出入国時には有効なパスポートが当然に必要となります。また、上記の通り、申請時の氏名とパスポートの表記が少しでも異なると、確認作業に時間が掛かってしまうため、在留資格認定証明書交付申請時に写しを提出できることが望ましいでしょう。
【在留期間更新許可申請】
有効なパスポートがない場合でも、期間更新許可申請は可能です。
日本に中長期在留している外国人は、在留カードを常時携帯することが必要で、警察官等から提示を求められた場合には、提示する必要があります。パスポートを携帯しているかどうかにかかわらず、在留カードは常時携帯することが必要です。パスポートの有効期限が切れていることは在留資格に影響しません。
【在留資格変更許可申請】
有効なパスポートがない場合でも、在留資格の変更許可申請は可能です。
在留期間更新許可申請と同じです。パスポートの有効期限が切れていることは在留資格に影響しません。
申請時の対処法
申請書類の書き方
在留資格(認定証明書交付申請・期間更新許可・変更許可)の申請時、申請書には、『旅券番号』と『旅券有効期限』を書く項目があります。
この項目はどのように記載したらいいのでしょうか。

・パスポートが失効している場合は、状況に合わせて、『申請中』『更新予定』『なし』『有効期限切れ』と記載します。有効期限欄には何も記載しません。
・オンライン申請の場合は、空欄にして申請して構いません。その際は、フリー欄に「パスポートは現在申請中/有効期限切れ』など、状況を簡潔に補足しておくと丁寧です。
・申請中の場合で、パスポートの更新手数料の領収書がある場合は、写しを提出することをおすすめします。
・期間更新許可・変更許可の場合、「申請中」や「有効期限切れ」といった状況のいずれにおいても、申請理由書などの添付書類の中で、パスポートの提出がない事情をきちんと説明しておくことで、申請者としての誠実な姿勢が伝わりやすくなります。
「旅券を提示することができない理由書」を提出
期間更新許可・変更許可の場合は、申請書に『申請中』『更新予定』『なし』『有効期限切れ』と記載する、申請理由書内で簡潔に説明することに加えて、
『旅券を提示することができない理由書』又は『旅券が未取得である理由書』を提出します。

法務省の「旅券が未取得である理由書」という様式もあります。どちらを使用しても差し支えありません。
なお、この書類は申請者本人が直筆で署名する必要があります。
実際にあった相談事例:パスポートなしの在留資格申請
更新中のケース
在留資格「技術・人文知識・国際業務」のお客様の期間更新許可申請時に、パスポートの更新手続き中のため、新しいパスポートが手元にない状態でした。
申請時点で手数料の支払いは完了していたため、その領収書の写しを添付資料として提出。また、あわせて「旅券が未取得である理由書」も作成し、「現在パスポートは更新手続き中であり、発行待ちである」旨を理由書内に明記しました。

有効期限が切れているケース
在留資格「技術・人文知識・国際業務」のお客様の期間更新許可申請時に、パスポートの有効期限が半年ほど切れていました。
母国の政治的情勢が悪化し、クーデターが起こっている状況が続いており、政権の混乱が起きていました。その中で、現政権へパスポート申請をすることに不安を覚えた申請人は、パスポートを更新申請できずにいました。
「旅券が未取得である理由書」を提出し、事情を丁寧に説明。「情勢が落ち着き次第、速やかに更新手続きを行う予定です」と記載しました。また、所属機関にも共有し、雇用継続理由書にもその内容を記載しました。
まとめ
パスポートがなくても在留資格の申請はできる
在留資格の申請において、有効なパスポートがない場合でも、申請を行うことは可能です。
たとえば、在留資格認定証明書交付申請の時点では、パスポートが未取得であっても問題ありません。また、認定証明書交付申請・期間更新許可・変更許可の申請書には「旅券番号と有効期限」を記入する欄がありますが、有効なパスポートがないことを理由に申請できないというわけではありません。
このようなケースでは、申請書とあわせて「旅券を提示することができない理由書」や「旅券が未取得である理由書」を提出し、現在の状況と今後の対応予定をきちんと説明しましょう。たとえば、更新の手続き中、更新予定、あるいは母国の情勢により手続きが困難な場合など、事情を明確に記載することで、申請人としての誠実な対応が入管にも伝わりやすくなります。
パスポートの有効期限は定期的に確認を!
有効なパスポートがなくても在留資格の申請に影響がないとはいえ、パスポートの有効期限には、日ごろから意識を向けておくことが大切です。急な事情で母国に一時帰国しなければならないケースもあり得るため、いざというときに慌てないよう、有効期限が近づいてきたら早めに更新手続きを検討しましょう。
なお、日本国内でのパスポート更新は、本国で行うよりも時間がかかる場合が多く、数週間を要することもあります。余裕を持った対応が安心につながります。
投稿者プロフィール

- 申請取次行政書士。外国人の在留資格に関する申請(認定証明書交付申請、変更許可申請、更新許可申請)、深夜酒類提供飲食店届出、風営許可申請を専門分野にしています。ご依頼者様の「時間」「想い」を大切に、あなたのビジネスを成功へ導きます。
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